超音波検査 プローブ走査のキモ

超音波診断で患者さんとコンタクトする重要なパーツ「プローブ」。内部には圧電素子と呼ばれる超音波の送受信を行うトランスデューサーが配置されています。

このプローブを使って体内をスキャンし、画像診断を行います。その際、まず重要なことはプローブの向きやスキャン方法。プローブからどのように断面が形成されるのか?、プローブの向き、スキャン方向、力加減で描出画像がいかようにもなってしまいます。

プローブの持ち方

プローブの持ち方は対象領域にによって異なります。広くスキャンする領域では被検者に手を添える事はしない方が良いと思います。固定が大切な心臓や血管、圧迫が重要な部位では被検者に手を接した方がやりやすいと思います。

概していえることは、超音波検査初心者の多くが強く握りしめてしまう傾向にあるということ。プローブは強く握りしめず、スキャンの自由度を高めつつ、必要な時に圧迫できるような持ち方を工夫しましょう。

プローブの向き

プローブの向き(=画像表示方向)は検査領域により決められており、主に臓器の横断面と縦断面の表示に決めごとがあります。

腹部エコーや甲状腺、乳腺では横断面を表示する場合は尾側から頭側を見上げるように表示します。縦断面では頭側を画面の左側へ表示と日本超音波医学会で決まっています。

血管に関しては、心臓を循環器の中枢と考え、末梢側を画面右に表示するとか…。なかなか分かり難いものです。

ともかく、プローブの持つ部分の横に突起(プローブマーク)があり、その突起の方向が画面の右側にきますので、画像だけでわかり難ければ、プローブマークの向きを確認してみると理解しやすいと思います。

スキャン方法

プローブ走査(スキャン)の方法には装置で行うもの(セクタやコンベックス、リニア、ラジアルスキャン等)と検者ご自身で行うものを組み合わせて画像を作り出します。

装置でスキャンは検査目的や対象領域によってプローブの種類を選択することになりますが、大雑把に言うと心臓はセクタ、甲状腺や乳腺など浅い領域はリニア、腹部全般はコンベックスを選択する。となります。

セクタは狭いウインドウから広視野が得られ、かつ周波数も低めに設定されているものが多いので深部への透過もよい。つまり心臓に適しています。コンベックスは高周波リニアで苦手な部分に適応します。高周波リニアは分解能が高いというメリットはありますが、視野幅・深度とも狭く浅い領域にしか使えない。一方プローブ先端にラウンドを設けて視野を確保し、周波数もやや低く設定することで深部に対応できるコンベックスはより広範な部位に対応ができます。

検査する我々が行うスキャンには「平行走査」「扇走査」「回転走査」「振り子走査」などがあり、加えて「圧迫」も検者が行う大切な走査方法です。これらの組み合わせやスキャン技術によって描出されるエコー画像に大きな差が出ることとなるし、検査の精度にも差が出てしまいかねない大切な部分。ここが職人技と言われる所以なのでしょう。

超音波検査の手技でナンセンスだと感じるのは「対象臓器を出してから、どうしよう」と考えること。検査を行う際には、「この断層面を使ってこのように検査する」という検査者の意思やプランがありきかと思います。

したがって、この部位をこのように検査するという検査(走査)プランは必須であり、このプランが欠如しているとなかなか上手くはできないのが超音波診断です。逆に検査プランがしっかり確立していれば、走査方法は必然と決まってくるとともに、画像を出すことに迷ったり、写真撮影に時間を取られることも少なくなると思います。

したがって、超音波診断では検査プランが大切な要素であると言えます。

検査手順

スキャンは検査手順に従って行うことが重要です。検査対象によって手順は異なるが、各検査対象ごとに検査手順を決めておきましょう。

例えば腹部エコーを行う場合は「肝臓⇒胆道⇒膵臓⇒左右腎臓⇒脾臓⇒腹部大動脈⇒膀胱⇒必要に応じて消化管」といった具合である。検査する臓器の順番は問わないが、心窩部縦走査でスタートし、肝左葉、横走査で肝左葉⇒右葉⇒右肋間走査⇒のように一つの臓器に対する検査手順も決めておく。

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