救急エコーについて

救急時の超音波検査

救急外来でエコー装置を扱えることは大切であり、今や救急医であれば超音波診断は必須の技術である。ただ、何も頭の先からつま先までエコー全領域エコーのスペシャリストであれというのではなく、ERで最低限必要な技術は身に付けておくべきである。

救急外来で必要なエコー手技にはPOCUS(point of care ultrasonography)、FAST(Focused Assessment with Sonography for Trauma)、EFAST(Extended focused assessment with sonography for trauma) 、RUSH Exam(Rapid US for Shock and Hypotension)、FATE(Focused assessed transthoracic echocardiography)、FALLS-protcol (Fluid Administration Limited by Lung Sonography)、BLUE Protocol(Bedside Lung Ultrasound in Emergency)・・・等、種々のエコー手法がある。

状況に応じて使い分ける必要があるが、上記に挙げた超音波手技については身に付けておきたいところである。

救急エコー

POCUS(point of care ultrasonography)

欧米で広まってきている「身体診察の延長」としての超音波検査法で、評価項目を限定し、簡単な手順でベッドサイドで行える点が特徴。初心者でも日常診療にすぐ生かせる超音波スキルの習得を目的とし、救急・集中治療・入院診療など様々な場面で導入されている。

とあるが、個人的に「初心者でも」という部分には、実際に行ったり、指導する上でかなり違和感を覚える。エコーは初心者がそんなに簡単に行えるシロモノではなく、多少の熟練が必要である。パッとプローブを当てて出てきた画像が「何が映っているのか?」も解らなくては、そもそも施行する意味もないし、時間の無駄と言わざるを得ない。逆に、ある程度習熟していれば非常に有効な手段である。

POCUSでは担当医が自らエコーを行い,目的臓器をある程度は自分たちで評価・診断することで,診療時間を短縮したり,精査が必要なケースのみ専門家にfull studyを依頼するといったことが可能である。また,在宅診療や病棟での褥瘡対策などでは医師の指示の下,看護師がエコーを実施して臨床情報を得ることもあり,チーム医療を実践するうえでのコミュニケーションツールとしても存在感を増しつつある。

POCUSのススメ

参考)

The accuracy of point-of-care ultrasound to diagnose long bone fractures in the ED

International Federation for Emergency MedicinePoint of Care Ultrasound Curriculum

Can medical learners achieve point-of-care ultrasound competency using a high-fidelity ultrasound simulator?: a pilot study

FAST(Focused Assessment with Sonography for Trauma)

主に外傷性ショックの初療に用いられ、ショックの原因となる心タンポナーデ、大量血胸、腹腔内出血の有無を短時間に素早く確認する。FAST検査の手順は、通常 ①心嚢腔、②モリソン窩、③右胸腔、④脾臓周囲、⑤左胸腔、⑥ダグラス窩の順番に行い、液体貯留の有無を検索していく。さらにFASTにの気胸の評価を加えたExtended FAST(EFAST)が欧米を中心に行われるようになってきた。

参考)

FAST

focused assessment with sonography for trauma

FASTからEFASTへ

RUSH Exam(Rapid US for Shock and Hypotension)

救急外来でショックまたは低血圧の原因、鑑別を行うのにエコーを活用しようという報告にRush examがある。閉塞性ショック、心原性ショック、hypovolemicショックをエコーで評価、否定できれば血流分布異常ショックと考えようということ。見るポイントは、TANK(循環血液量と出血のチェック),PUMP( 心 機 能 Size,Sac,Squeeze の チ ェ ッ ク ),PIPE(大動脈疾患と肺塞栓症 / 深部静脈血栓症のチェック)の 3 つの評価と気胸の有無から、患者の病態を推測する。BP(血圧)=CO(心拍出量)×TPR(血管抵抗)の病態理解に則って、エコーでショックの原因検索をする。FASTにIVC、緊張性気胸や肺水腫、大血管や深部静脈血栓を加えた手技となる。

参考)

The RUSH exam: Rapid Ultrasound in SHock in the evaluation of the critically lll.

The RUSH Exam 2012:Rapid Ultrasoundin Shock in theEvaluation of theCritically Ill Patient

The impact of using RUSH protocol for diagnosing the typeof unknown shock in the emergency department

BLUE Protocol(Bedside Lung Ultrasound in Emergency)

主な疾患(肺炎、鬱血性心不全、COPD、喘息、肺塞栓症、気胸)について> 90%の精度で設計されており、正常な肺表面(バットサイン、肺スライディング、Aライン)、胸水(クワッドサインおよびシヌソイドサイン)、肺硬化(フラクタルおよび組織様サイン)、間質性症候群(肺ロケット)を示す10個のサインの習得が必要。

FALLS-protcol (Fluid Administration Limited by Lung Sonography)

分配的(通常は敗血症性)ショックの診断を促進するために閉塞性、次に心臓性、そして血液量減少性ショックを順次除外する。

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